放射線被害
私の子ども達の主治医であった小児科医林Drを中心とした
医師団体からの「放射線被害」についてのメールを
紹介する。
●医療問題研究会からの見解と訴え 2011年3月24日現在
人災福島原子炉事故に対する考え方-医療問題研究会-
3月11日の関東東北大震災で福島第一発電所の原子炉群が
危機的状況に陥っている。情勢は流動的であるが、
健康被害という観点からの基本的視点を述べたい。
1. どのくらいの放射能が流出しているのか?
いわゆる核爆発は起こりにくい。もし起これば放射能量の
単位として広島型でさえ15x1021ベクレルという量が空中に。
原発内のウラン燃料ははるかに多い。チェルノブイリでは
核爆発はなく、推定放出放射能は1018ベクレル位と。
したがって核爆発が起これば100km、200kmといった範囲の
避難で追いつくはずがない。今回の放出量については3月19日
の朝日新聞報道によるとロシアからとの情報で、チェルノブイリの
5%くらいではないかとのこと(算定方法等は不明)。
2. どのくらい人体に影響するか?
ベクレルという単位は純物理量で、人の側からみると
同じベクレルでも放射線の種類や臓器などにより人体への
影響が異なるため、ベクレルの比例量であるが被ばく線量の
単位はシーベルトを使う。放射線被ばく症状は急性期障害と
晩期障害にわけ、急性期障害は被ばく線量に比例し、
胸部レントゲンでは0.05ミリシーベルト(1ミリシーベルトは
1シーベルトの1/1000)、CTではその100倍で、この程度の
被ばくでは急性期症状はでない。100-200ミリシーベルトを
越えるとめまいなどを訴える人がでる。1000ミリシーベルト
(=1シーベルト)を超えると死者が出始め、6シーベルトでは
全員死亡する。ちなみに広島では瞬間100シーベルトと推定。
福島原発では15日の爆発の際(核爆発ではない)
、原発敷地内で3月15日瞬間最大12ミリシーベルトを記録
(3月21日朝日)したとある。原発内で働く労働者の急性障害は
どうかについては現状をはかる上でも重要であるが、
情報は隠されている。地上定点の経時観測、情報の公開も重要である。
今のところ問題は晩期障害に対する影響である。
チェルノブイリでは3年後、30km離れた地表での測定で、
なお年間換算量で胸部CT2回分のセシウム137が検出されたと
される(高木仁三郎全集Ⅱ巻より)。晩期障害とはがん化、
老化のことであり、どれだけ少しの放射線でも影響する。
集団全体で1シーベルト被ばくすると、ゴフマンの推計では
3700人、国際放射線防護委員会(ICRP)の推計でも100人がん死が
増加するという。 外部被ばくについてはできるだけ遠くに
避難するしかない。放射性物質を体内に取り込んで起こる
被ばくを内部被ばくというが、被ばくの50%以上、高木氏に
よればチェルノブイリ被ばくの80-90%は内部被ばくだった
という。水、野菜、ミルクなどによるが、甲状腺に蓄積する
ヨウ素131による内部被ばくが最もこわい。
半減期は8日であるが、半減期が短いということは短時間に
多くの放射能が照射されるということである。
小児の甲状腺がんは10万に対 し0.1から2.2人と少ないはず
だが、チェルノブイリをかかえるベラルーシでは10年間、
10倍以上の小児甲状腺がんが発生した。また、小児白血病も
明らかに増加した。このように、晩期障害への恐れは
とどまるところがない。
3. 対策 放射線災害の原則はできるだけ遠くに避難することで
あるが、それができない場合、外出時の被覆、ヨード剤の服用、
ミルクや飲料水、野菜摂取への注意などが必要で、内部被ばくを
最小限にする試みをすべきである。情報があいまいな中、
事情が許せば感受性の強い思春期、乳幼児の小児、妊婦は
できる限り遠くに避難すべきである。政府は危険性についての
情報公開と退避希望者への早急なコミュニティー確保をすべきである。
4. そのほか 原発敷地内で作業に従事されている労働者、
消防隊員などの安全管理と健康情報の公開、後々のための
生物学的被ばく線量推定の調査なども政府に要求すべきである。
原発中止を求めることは言うまでもない。
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